第2巻 禁煙の動機づけ面接法

【内容】

本書は、ミラーとロルニックによって考案された動機づけ面接法を禁煙医療に活かすための指導書であるとともに、行動変容問題全般についての動機づけ面接法そのものの入門書としても使用できる。書かれている内容は、2~3日間の研修会(ワークショップ)で初学者が学んでいく事柄に準じており、本書を読むだけで動機づけ面接法の「ミニマム」を理解することができるはずである。


本書の構成は、第1章で動機づけ面接法の概要紹介、第2・3・4章にて、基礎となるスピリット、原理、基本技法の解説となっている。ここまでに書かれていることが実施できれば、不十分ではあるが一定水準の面接になる。第5・6・7章で、基礎技法を応用してのチェンジトークや抵抗の扱い方が、そして第8章で面接全体を通じての戦略が解説されている。


しかしながら、残念ながら本書を読んだだけでは動機づけ面接法を実施できるまでにはならない。動機づけ面接法は、単なる手順ではなく、楽器の演奏やスポーツのような、体で覚える技術(スキル)だからである。本書によって、動機づけ面接法をさらに勉強する価値があると評価できたら、第9章に紹介してあるワークショップ形式の研修会などに参加を検討していただきたい。参加した上で、再度本書を開いていただけば、最初とは異なる知識を得ることができるだろう。そのような意味で、本書は「ミニマム」でありながら「ミニマム」ではない。


本シリーズは3巻構成の第2巻で、第1巻で禁煙医療の基礎的手順を学んだあとのステップとして、動機が不十分な来談者(患者)へのアプローチである動機づけ面接法を扱った。第3巻では、禁煙したい気持ちが十分強いのにも関わらず、なお禁煙が困難な来談者に対するアプローチとして認知行動療法を解説する。

 

(「本書の使用方法」より)

【編集委員】

監修

中山 脩郎(神奈川県内科医学名誉会長 中山医院 院長)
宮川 政昭(神奈川県内科医学会会長 愛政会宮川内科小児科医院 院長)
小野 容明(神奈川県内科医学会副会長 横浜呼吸器クリニック 院長)
金森 晃(神奈川県内科医学会副会長 かなもり内科 院長)
松田 隆秀(神奈川県内科医学会副会長 聖マリアンナ医科大学病院総合診療内科 教授)
長谷 章(神奈川県内科医学会神奈川禁煙・分煙推進委員会 委員長 神奈川県内科医学会禁煙指導マニュアル作成委員会 委員長 長谷内科医院 院長)
相澤 政明(相模台病院薬剤部 部長)
北田 守(大倉山内科クリニック 院長)
高見沢 重隆(たかみざわ医院 院長)
出川 寿一(宮前平健栄クリニック 院長)
野村 良彦(野村内科クリニック 院長)
原田 久(碧水会長谷川病院)
藤原 芳人(ふじわら小児科 理事長)
古木 隆元(武田クリニック 院長)
宮下 明(医療福祉生協深沢中央診療所長)
山田 峰彦(やまだ内科クリニック 院長)

 

執筆

加濃 正人(新中川病院 内科・神経科)

 

イラスト

森川 起代巳

 

協力

羽鳥 裕(日本医師会常任理事 はとりクリニック 院長)
石渡 良太(神奈川県内科医学会事務局)
大坪 陽子、松尾 邦功(Coding Labo Japan
三瓶 舞紀子(あいまい語リスト提供)
Miller WR原井宏明(「個人的価値カード並べ替え」使用許諾)


【目次】

1.動機づけ面接法の定義と効果

 (1)動機づけ面接法とは?/(2)効果

2.動機づけ面接法のスピリット

 (1)協同/(2)受容/(3)コンパッション/(4)喚起

3.動機づけ面接法の原理

 (1)正したい反射と自己動機づけ/(2)分化強化/(3)両価性への介入

4.基本技法~OARS

 (1)開かれた質問/(2)是認/(3)聞き返し/(4)要約

5.チェンジトークの識別と増幅

 (1)チェンジトークの種類/(2)チェンジトークの分化強化/
 (3)チェンジトークの増幅~EARS

6.チェンジトークを引き出す積極的な質問法

 (1)ソクラテスの質問法/(2)尺度化の質問/
 (3)重要度に関するチェンジトークを引き出す質問/
 (4)自信度に関するチェンジトークを引き出す質問/
 (5)実行に関するチェンジトークを引き出す質問

7.抵抗への応答

 (1)不協和と維持トーク/(2)不協和の原因/(3)不協和への応答/
 (4)維持トークへの応答

8.動機づけ面接法の戦略

 (1)4つの過程/(2)損益と価値観の整理/(3)会話における勢いの調節

9.動機づけ面接法の学習

 (1)単純だが簡単ではない/(2)学習のステップ/
 (3)動機づけ面接治療整合性尺度~MITI

文献

巻末付録

 個人的価値カード並べ替え